牽引療法の歴史は古く、古代ギリシャのヒポクラテスが骨折や脱臼の整復に用いたと記録があります。 牽引療法の目的は、骨折の整復と固定、脱臼の整復、関節疾患に対する関節の安静、疼痛の緩解、 変形、拘縮の予防と矯正等、脊椎疾患に対する局所の安静と免荷(脊椎牽引方法)があります。
また、牽引療法を部位別分類と方法別分類に分けると、四肢牽引療法、脊椎牽引療法の2種があります。 さらに、牽引方法により分類すると、骨を直接牽引する直達牽引法と、皮膚を介して牽引する介達牽引法の2種類がありますが、 理学療法では、脊椎牽引療法における頸椎、腰椎に対する介達牽引がほとんどです。ここでは、 介達牽引における脊椎牽引療法を中心に記載します。
脊椎牽引療法は、頸椎、腰椎などの脊椎症や椎間板ヘルニアのほか、脊椎に起因する症状の軽減を図ることを目的とします。 効果としては、椎間関節周囲軟部組織の伸張、椎間板・椎間関節の軽度の変形・変位の矯正、 椎間関節の離開・免荷、椎間孔の拡大化、攣縮筋の弛緩、マッサージ的効果による循環改善・促進等があると言われています。
禁忌としては、運動が禁忌となる部位への使用、急性の障害や炎症のある場合、過可動性関節や不安定性関節の領域等々とされ、 使用においては低い牽引力から始め、牽引後数分間の安静が必要とされています。
牽引療法器
牽引療法は、部位別、方法別以外に、その連続性、動力源等からも分類されます。
連続性による分類としては、持続牽引(=数時間以上牽引を持続するもので、牽引力は比較的小さい)と、 間歇牽引(=秒単位での牽引と休止を交互に行う、電動牽引機での一般的な使い方)とに分けられます。
| 間歇牽引 | 持続牽引 |
| (a):筋攣縮を緩和する | (a):装置ならびに操作が簡単であり、家庭でも使用できる |
| (b):筋肉、靭帯及び被膜組織にマッサージ効果を与える | (b):牽引の負荷が常にかかっているので患者さんにとって苦痛となる場合もある |
| (c):組織の腫脹の減退 | |
| (d):循環の改善 | |
| (e):神経根に対し、硬膜鞘とその隣接被膜性組織の癒着の予防・除去 | |
| (f):牽引が断続的するので大きな牽引力がかけられる | |
| (g)神経根の被膜鞘の癒着が慢性となっているものでは、かえって神経根刺激症状の悪化をきたすことがある | |
| (h):時としてスパズムを増悪させることがある |
動力源による分類としては、重錘牽引(=重錘の重力を利用した持続牽引)、 自重牽引(=体重を利用した斜面の角度で牽引力を調節する持続牽引)、 電動牽引(=モーターを用いた、持続・間歇の選択が可能な牽引)の3種類に分けられます。