ニッパツ三ツ沢球技場
神奈川県横浜市をホームタウンとするJリーグ加盟のプロサッカークラブ「横浜FC」。2022明治安田生命J2リーグ では、例年以上に短期間の連戦が続くなかで着実に勝点を積み上げ、降格からわずか1シーズンでJ1リーグ復帰を成し遂げました。
『横浜FCユーザーレポートVol.2』では、横浜FC所属スタッフの片瀬 裕己トレーナーにインタビューを実施。第一線で戦う選手の方々を支える、プロフェッショナルなケアについてお話を伺いました。
片瀬 裕己 トレーナー
横浜FCにとって激動の一年となった2022年シーズン。選手の方々を間近で支えてきた片瀬トレーナーの目にはどのように映ったのでしょうか。
J1昇格は本当に、何よりもよかったと感じています。私達トレーナーは、常に強いストレスや緊張と戦っている選手達の一番近くにいるので、この一年間、選手達のフラストレーションを少なからず感じていました。しかしなんとか年間を通して大きな怪我も少なく乗り越えることができ、そういった意味でも非常に順調なシーズンだったと思います。プレッシャーの中で戦っている選手達を見ていると、やはり第一線で活躍している選手達は、ポジティブに物事を考えるのが上手いと感じます。私自身も、そういった選手達の姿勢を参考にすることで非常に勉強になることが多いです。人間というのはつい悪い面にばかり目を向けてしまいがちですが、そこでいかにポジティブな良い部分を探して気持ちを切り替えていくかということを選手たちに倣って意識するようにしています。
J1昇格のために何としてでも勝ち続けなければならないという緊張感の中で、選手の皆さんをはじめとしたチームの方々のプレッシャーは相当なものだったことが窺えます。オフィシャルパートナー契約を締結させていただいてから約1年、重圧を跳ねのけて駆け上がっていく横浜FCを間近でサポートし、昇格を祝福することができたのは、弊社としても大変喜ばしく光栄な経験となりました。
片瀬トレーナーは、高校時代からトレーナーになることを志していたとのこと。そのきっかけから横浜FCに所属されるまでの経緯についてお話しいただきました。
剣道に打ち込んでいた高校時代、肉離れを治療してくださったスポーツ接骨院の先生に的確なリハビリと施術を施していただいたことが、トレーナーを志したきっかけです。その高い技術力とスポーツに精通した知識力にとても感銘を受けました。
高校卒業後はトレーナーになるために専門学校へ進学し、そこで鍼灸あん摩マッサージとアスレティックトレーナーの資格を取得しました。その頃から既にスポーツ現場で仕事をしたいという思いがありましたが、当時の先生から、「最初から現場に行ってトレーニングをサポートするだけでは、技術の幅が狭くなってしまうかもしれない」というアドバイスをいただいたこともあり、まずは治療院に就職することにしました。運営会社はプロサッカーチームにもトレーナーを派遣しているようなスポーツに関わりの深い企業で、東京や鹿島などに複数の店舗があり、各地の治療院を毎週行ったり来たりして技術を磨きました。お客様は一般の方も多く、例えば東京の店舗では、趣味のワンランク上のセミプロレベルでスポーツをやられているような方がよくいらっしゃいました。もちろんプロスポーツ選手の方を施術することもあり、日々スポーツと密接に関わりながら3~4年程働きました。その後、会社の紹介でJ2プロサッカーチームにトレーナーとして所属することになり、7年ほど経験を積みました。さらにそこからのご縁で横浜FCに所属することになり、今に至ります。今年でもう4年目になりますね。
アステオを使用する片瀬トレーナー
プロスポーツ選手から一般の方まで、幅広い施術経験を積まれたという片瀬トレーナー。プロ選手ならではの施術ポイントや一押しの治療モードについて詳しく伺いました。
当然個人差はありますが、デスクワークをされている一般の方などは、マッサージした後の改善があまり良くなかったり、血流が回っていないと感じることがあります。一方でスポーツ選手は普段から体を酷使しているので血流不足のような症状は少ないですが、筋量が多く反発が強いので、施術のテクニックが及ばないと全然ほぐれないことがあります。電気や超音波を用いての施術については、選手によって刺激への耐性が異なりますので、敏感な選手には日本メディックスさんの「アステオ」を弱めの出力で使用するなど、無理強いはしないように気をつけて対応しています。
一押しの治療モードは、アステオのHV(ハイボルテージ)です。むくみに効果がある印象です。急性期の怪我などに対しては大体使用しています。むくみが取れて足首がすっきりしたなど、変化を感じることが多いです。HVをかけながらストレッチしてもらうこともあります。可動域訓練も、HVをかけながら行うと筋の収縮がよりスムーズになります。また、L5(腰椎5番)周辺の筋肉の硬さは、マッサージだけでは中々改善しない場合があるのですが、そこにHVを流しながら前屈などのストレッチを行って筋収縮を促すと、硬い箇所が少し動きやすくなります。その他には、MCC(マイクロカレントクロス)モードを緊張が激しい選手に使用したり、自律神経の乱れから出てしまうむくみに対してSSPを使ったりします。10分~15分という短い時間でも全然違います。少しずつ場所をずらしながら、顔に鍼を打ったりするのと同じような感覚でむくみやすい部位にSSPを使用すると非常にスッキリするので、個人的にすごく好きな使い方です。
弊社独自の技術であるSSP療法をご活用いただけているとのこと、メーカーとして大変光栄に存じます。
アステオの施術を受ける 西山 大雅 選手
ハイレベルな技術と知識、判断力が要求されるプロスポーツ現場。施術の具体的なアプローチについても詳しくお話しいただきました。
当然シーンや目的に合わせて機器を使い分けることになります。例えば高周波(ラジオ波)の場合は筋疲労や亜急性期の捻挫に対してよく使用します。超音波は急性期と慢性期の両方に使用することが多いです。小さいポイントなら超音波、広い範囲だったら高周波という具合にも使い分けます。また、除痛効果が高いのはやはりHVだと感じています。筋肉の張りや疲労以外で、なかなか痛みが取れないという場合にはHVを使用することが多いです。これは私自身のフィーリングも入ってしまうのですが、筋肉の張りでも筋疲労でも、その時の硬さ(テンション)を見て、電気なのか、高周波なのか、鍼なのか、もしくは徒手のオイルマッサージをするべきなのかを判断しています。表面的な張りなのか、腱がぴんと張ってしまって硬直しているのか、それとも筋全体の張りなのかによって異なります。例えば試合の次の日の筋疲労のような疲労だったら、私は徒手のオイルマッサージで流してしまうことが多いです。そうすると血流が良くなるし、筋膜の筋の癒着などが剥がれてリリースにもなります。腱がピンと張ってしまうような時は、オイルマッサージでグッと腱に沿ってしっかりほぐして、それにセットで高周波をかけながら手で施術します。場合によっては電気針で筋の収縮を促したり、痛みが強ければ、そこにハイボルテージを使用したりします。そういった判断は今までの経験からある程度自分の中に確立された感覚があり、それに従っているような感じですね。
急性期の損傷の場合は、超音波と微弱電流を使いますし、もしむくみが強かったらハイボルテージを使います。捻挫だったら高周波を流しながら、関節をゆっくりと動かしていくというやり方をしますね。関節を動かすときはあくまで損傷が出ない角度に留めて、アイシングも繰り返し行います。冷やしながらも組織が損傷しないように温めて循環もさせるという、微妙なさじ加減です。一方で筋肉に対しては、そういった温熱を加えたりはせず、超音波の後にHVで周辺のむくみを取るというイメージです。
「常に緊張感をもって仕事に臨んでいます。」と語る片瀬トレーナー。知識と技術の研鑽を欠かさないストイックな姿勢は、まさにプロフェッショナルという印象を受けました。最近では、専門学校から依頼を受けて学生の方々に講義をされることもあるとのこと。片瀬トレーナーの背中を追いかけ、横浜FCで働くことを目指す未来のトレーナーが更に多くなりそうです。
日本メディックスでは2022年よりオフィシャルパートナー契約を締結し、自社物理療法機器の提供等を通じて横浜FCをサポートしております。チームの永遠のシンボルであるフェニックスのように、更なる高みへの飛翔を目指す横浜FC。今後の活躍から目が離せません。
取材日:2023年1月27日